粉体ホッパーとは、粉体や顆粒状の物質を貯蔵し、必要な量を供給するホッパーのことを指します。
主に、材料(粉体)の流動性を確保し、供給ラインへの安定した供給を実現するために粉体ホッパーは用いられます。
今回は、粉体ホッパーの解説とあわせて内部の流動性を改善する設計・製作のポイントもについてご紹介いたします。
粉体ホッパーとは?
まずホッパーについてですが、ホッパーは別名:ロート〈漏斗〉、コニカルとも呼ばれ、あらゆる種類の流動可能な材料を必要に応じて、そこから分配させるピラミッド型もしくは円錐型の筐体を指します。
その中でも粉体ホッパーは、粉体や顆粒状の物質を貯蔵し、必要な量を供給するホッパーのことを指します。
粉体ホッパーは、粉体の流動性を確保することが重要になりますが、流動性を確保するにはホッパーの設計や製作時の加工精度が重要になります。
粉体ホッパーの主な用途
粉体ホッパーは、食品業界では小麦粉や砂糖などの各種原材料、飲料業界では粉末飲料の原材料、化学薬品業界では薬品を投入し、製品を製造するラインで使用されます。
粉体ホッパーは幅広い業界で使用されていますが、多くの場合サニタリー性と呼ばれる衛生性が重要な要素となり、粉体ホッパーの素材や設計、製作において衛生基準を満たしていることが求められます。
ホッパーではないですが、同じくサニタリー性が求めれる配管やタンクにおいて、その設計や製作時のポイントを解説した記事もございますので、是非そちらも合わせてご覧ください。
>>「サニタリータンクの設計・製作における13のポイント」はこちら
>>「サニタリー配管とは?概要・特徴・必要性を解説!」はこちら
粉体ホッパーで重要な粉体の流動性とは?
流動性は「すべり性」とも呼ばれており、材料(粉体)の流れやすさを表す言葉です。
例えば、砂時計の中の砂をイメージいただくとわかりやすいですが、砂はサラサラと留まることなく流れるかと思います。このような粉体は「流動性が良い」と言われ、逆にスムーズに流れないものは「流動性が悪い」と評価されます。
粉体の流動性が悪い場合は、ホッパー内で粉体が詰まったり、内容物の投入や排出を妨げたりすることがあります。
このような粉体の流動性ですが、流動性を左右する要因には以下のようなものがあります。
1. 安息角(あんそくかく)
水平な地面に粉体が積み重なっているときに、粉体と地面が作る角度のことを表しています。安息角が大きい(広がらず、その場で高く堆積する)粉体は流動性が悪く、ホッパー内でブリッジなどのトラブルを起こしやすくなります。
2. 凝集度(ぎょうしゅうど)
振動によってダマができやすさを数値化したものです。凝集性が高い(ダマになりやすい)粉体ほど流動性が悪いとされています。
3. 噴流性(ふんりゅうせい)
飛散の起こりやすさを表したものです。噴流性が低い(飛散が起こりにくい)粉体ほど流動性が悪く、詰まりやすいとされています。
これらの要因が「流動性が悪い」と示されるほど、対策が必要になります。
粉体ホッパー内部の流れについて解説
次に、ホッパー内部の粉体の流れについて解説していきます。
ホッパー内部の粉体の流れは、大まかにファネルフローとマスフローに分類されます。
ファネルフロー
ファネルフローは粉体が壁際に押し付けられ、壁との摩擦が増加しすることで、結果、排出口の真上にある粉体が最初に排出され、中心部にファネルと呼ばれる煙突状の空洞が形成される粉体の流動パターンのことを指します。
ファネルがしっかりと形成されてしまうと、貯槽の使用可能な容積が減少してしまうというデメリットがありますが、基本的にはファネルが不安定で崩れやすいため、周辺の粉体が崩れて流れ込み、自然崩壊が起こります。
マスフロー
マスフローでは、粉体が壁際でも均一に流れ、液体のように貯槽の粉体が沈降しながら排出される流動パターンになります。
この方法では、ホッパーの底部から順に粉体が排出され、最終的には上部の粉体もほぼ全て排出されます。マスフローの場合、ファネルフローのようなトラブルが発生しにくいという特徴を持ち合わせています。
ファネルフローでは、特にホッパーのコーン部で、粉体の詰まりやブリッジが起こりやすい一方で、マスフローは粉体の均一な流れを促進し、これらの問題を防ぐことができます。マスフローでは特にホッパー内部の滑り性が重要といえます。
また、製品や生産プロセスによっては、ファネルフローとマスフローを組み合わせて使用することで、最適な粉体の流動性を確保する必要があります。
粉体ホッパー内部の流動性を改善する設計・製作のポイント
最後に、粉体ホッパー内部の流動性を改善する設計・製作のポイントについて解説いたします。
1.内部の容量と素材(粉体)に合わせた、傾斜角度と排出口の設計
ブリッジ等の問題が発生しないためには、ホッパーの傾斜角度と排出口の大きさが重要になります。十分な強度を保ったうえで、粉体の流動性を確保できる傾斜角度や排出口にしなくてはいけません。
その他、ノッカーやバイブレーター、あるいはバイブロホッパー等の振動や衝撃を加える機器を取付けることで、粉体の詰まりが発生した際につまりを解消するという方法もございます。
2.バフ研磨→電解研磨を実施
粉末がホッパー内の粗い箇所で詰まったり、傷部分からホッパーの損傷が起こらないように、表面を鏡面状態にして精度を良くするたことが重要です。そのために、行っているのがバフ研磨です。
当社では、鉄粉を円盤端面にまぶして、乾燥させて固めるという工程を社内で完結させ、自社でバフから製造をする一貫体制を設けています。これにより、お客様の求める表面性状にあわせてバフを変えることができ、より粉体の流動性を高めることが可能になります。詳しくは下記記事で解説しております。
また、バフ研磨だけでなく、電解研磨を合わせて行うことで更に内部の粉体の流動性を高めることができます。電解研磨を行うことで、金属表面の微細な凹凸を除去し表面が滑らかになり、鏡のようにツルツルとした状態にすることができます。
お客様の求める粉体の流動性に合わせて、電解研磨まで対応できる体制を当社は持ち合わせています。こちらも詳しくは下記記事で解説しておりますので、是非合わせてご覧ください。
>>「電解研磨とは?電解研磨の効果と注意点も解説!」はこちら
当社による粉体ホッパーの製品事例をご紹介
①医薬品製造機械用 4連角丸ホッパー
こちらは、投入した医薬品の原料となる粉末を4分配できるように、ミニホッパーを連結させた4連ホッパーです。
形状としては、角丸ホッパーにあたるもので、投入口が角、排出口が丸という特殊な形状をしています。そのため、高い板金・溶接技術が要求される製品す。医薬品の粉末原料がホッパー内面に直に触れるため・・・
②角丸型ジャケットホッパー
こちらはホッパーと呼ばれる、漏斗状のステンレス製品です。内側に微細な粉状の材料を投入する際、材料のひっかかりを防ぐためのビードカットという溶接痕の除去加工を行っております。
また、このホッパーは本体上部は丸型ですが、下部は四角型に変形しております。そのため、高度な溶接整形と非常に滑らかなバフ仕上げが求められております。溶接後の微調整も難しいです。
③バイブレーション付きステンレスホッパー
こちらは、粉体充填用のステンレスホッパーです。
製品の背中の部分にバイブレーションを取り付けており、製品に振動を与えることで、粉詰まりを防ぐ仕組みになっています。振動でバイブレーションが製品から外れてしまわないよう、丁寧な溶接を施し製品にガッチリ固定させております。
溶接ビード(溶接によりできるボコボコしたもの)による凹凸に微細な粉を滞留させない為に・・・
④粉体充填機用ホッパー
こちらは粉体を充填するためのホッパーです。
溶接ビード(溶接によりできるボコボコしたもの)による凹凸に微細な粉を滞留させない為に、溶接部は全てビードカットを行い、その後バフ研磨で表面を磨き仕上げております。全面バフ研磨仕上げを施しており、美観性も優れています。また、丁寧なビードカットを行っており・・・
⑤8連ホッパー
こちらは充填機用の8連ホッパーです。
こちらのホッパーは、粉体充填中に巻き上がってしまう粉体を吸い出し、シール部に影響が出ない工夫がされています。また、ノズル部は投入物を滞りなく流すために、独自の特殊な形状にしています。これにより、内容物が溜まることなく、サニタリー性を高めることができます。
さらに、サニタリー性を高める工夫として・・・
粉体ホッパーの特注製作なら小花製作所まで
当サイトを運営する小花製作所では、粉体ホッパーをはじめとするステンレス板金に関する多種多様なサービスを展開しております。
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