スタッド溶接とは
スタッド溶接とは、ボルトやナットなど、スタッドと呼ばれるネジを金属板に溶接する方法のことを言います。
スタッド溶接は、板金加工に欠かせない技術となっており、自動車産業、土木、建築産業など幅広い業界で利用されています。
スタッド溶接の種類
スタッド溶接には、方式により3つの種類があります。
電力アーク方式
電力アーク方式では、直流電源を利用してスタッド溶接を行います。
溶接には、フェルールと言われる耐熱性の磁器で溶接部分を囲み、母材とスタッドの間に電流を流すことでアーク放電を発生させます。
あらかじめ設定された時間、アーク放電を続け、溶接を行います。
溶接された箇所はフェルールの内部で冷却され、冷却後、フェルールを割り、作業が終了します。
電力アーク方式では、厚板の母材に対して、M25などスタッド径のものを溶接することができます。
ショートサイクル方式
ショートサイクル方式は、溶接の原理は電力アーク方式と同じです。
ショートサイクル方式は、アークの発生を制御することで溶接を短時間で行います。
また、ショートサイクル方式では、フェルールを必要としません。
フェルールは大径のスタッドを溶接する際に、安定したアークを発生させ、冷却速度を緩やかにするために用いられます。
そのため、ショートサイクル方式で大径のスタッドを溶接する時は、不活性ガスなどを用いて、アークを安定して発生させる必要があります。
ショートサイクル方式は、車体パネルなど、主に自動車産業で活用されています。
コンデンサ方式
コンデンサ方式では、交流電源から充電したコンデンサを用いて、母材とスタッドの間に瞬間的に放電を行い、溶融、接合します。
溶接に要する時間が極めて短いため、母材が薄板の場合でも、変形や歪みが発生しにくいことに特長があります。
そのため主に、精密部品の板金加工に広く活用されています。
スタッド溶接のメリット
母材に対する影響が少ない
スタッド溶接は、アーク溶接など他の類似する溶接手法と比べると、溶接に要する時間が短いです。
そのため、母材に溶接痕が残りにくく、母材に与える影響が少ないことがメリットとして挙げられます。
また、スタッド溶接は、接合部の強度が高いことも特長としてあります。
短時間の作業が可能で効率的
スタッド溶接は、スタッド1単位あたりの溶接時間が、1秒以内と非常に短いため、生産性が高い溶接手法です。溶接に要する時間が短いことから、作業者への負担も軽減されることにつながっています。
操作の難易度が低い
スタッド溶接の溶接方法は、難しい操作が特になく、操作の難易度は低いです。
そのため、溶接機の条件設定さえすれば、作業者の技術の優劣に影響されることなく、品質のばらつきが少ない溶接が可能です。
スタッド溶接のデメリット
スタッド溶接できない箇所がある
スタッド溶接は、溶接可能な位置と不可能な位置があり、位置に制限があります。
その場合は、他の溶接方法で溶接を施すか、もしくはスタッド溶接が可能になるように位置にずらす必要があります。
明確な検査方法がない
スタッド溶接には明確な検査方法がありません。
一般的には、溶接後の検査として、溶接部表面と内部の検査があり、それぞれに検査法があります。
しかし、スタッド溶接においては、目視による外観検査とハンマーによって傾きを補正する曲げ検査が主流となっています。
明確な検査方法がないことにより、接合部が取れてしまうなどの欠陥や不具合が起ってしまう可能性があります。
まとめ
ここまでスタッド溶接について、その溶接方法と、メリットデメリットについて解説してきました。
スタッド溶接は古くからある溶接方法で、あらゆる分野で活用されています。
歪みを出したくないなどの場面で、スタッド溶接が用いられることが多いです。
しかし、説明してきたようにデメリットも存在します。メリットデメリットを鑑みて適した溶接手法を採っていくことが重要です。
「ステンレス精密板金・製缶加工センター」では、さまざまな溶接手法を活用して、多くのステンレス板金の試作加工を行ってきました。スタッド溶接の他にもアーク溶接、ファイバーレーザー溶接などの溶接も行なっております。
溶接について何かお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。